平成16年度受賞者

【内田論文賞】
内田論文賞・受賞論文:
著   者:小倉敏裕,浅野和也,金田伸也,清水宏史,長田千晴,猪狩功遺
表   題:カーブドスラブMin IP法による膵管,胆道イメージング
巻号ページ:Vol.21, No.1, pp.152-158.
 膵管や胆道系は上腹部三次元空間を複雑に広がり,一枚のCT画像で描出することが不可能であるが,臨床現場では膵管系あるいは胆道系全体を観察できる画像が強く求められていた.MDCTデータを利用し,複雑に屈曲した膵管あるいは胆道系を二次元画像として描出する方法にカーブドMPRがあるが,画像作成ミスにより正常な膵管,胆管等に偽狭窄を生じさせ,病変による狭窄として表示してしまうことがよくあった.そこで,カーブドMPRとスラブ法と最小値投影法の技術を合成したカーブドスラブMin IP法を適用させ,複雑に屈曲する膵管,胆道系の正確な描出方法を本論文で報告した.カーブドMPRとスラブ法と最大値投影の技術を合成した報告は血管系などに見られるが,膵管,胆道系に対する最小値投影法を応用した方法の報告は本論文がはじめてである.本法によって低侵襲的に膵管,胆道系の描出が可能となり,侵襲の大きなERCP検査は今後,ステント挿入など治療を目的とした手技に限定されていくと考える.また,MRCP検査より検査時間が短く被験者負担が少ない,解像力が高いなどの理由から,MRIからMDCTを用いた本法への移行が進む可能性を有すると考える.本論文は医療の現場から出てきた声をくみとり,即,診断に役立つ画像作成技術を開発,報告したもので,患者を検査の苦痛から解放し,不安を除くという大きなメリットをも与える優れた論文であるといえる.このような理由から本論文を内田論文賞とする.

【金森奨励賞】
受 賞 者:李 鎔範
金森奨励賞・受賞論文:
著   者:李 鎔範,蔡 篤儀
表   題:微小石灰化像良悪性鑑別のための人工ニューラルネットワーク法とファジィ推論法のROC比較評価
巻号ページ: Vol.21, No.1, pp.122-130.
 強力な学習機能をもつニューラルネットワーク(ANN)とあいまいさを学習できるファジィ推論(FL)は,汎用性の高いCADを構築するために非常に有用な手法として注目されている.著者らは,そのANNとFLを応用した4つのCADアルゴリズムを構築し,乳房X線画像における微小石灰化像の良悪性鑑別を例に4つの手法を比較した.そして,遺伝的アルゴリズム(GA)を適用したファジィ推論法(GA-FL法)が最も有効であったと結論付けた.微小石灰化像の良悪性鑑別の観点からもとても興味深い内容であり,論文としても良くまとまっているといえる.このような理由から本論文を金森奨励賞とする.

投稿者 lee : 2005年08月17日 14:48